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「厳しい」だけでは人は動かない ― 苦しい時こそ数字で見通しを共有する

業績が思うように伸びない時期、経営者の方々からよく聞くのが「社員には『厳しい』と伝えているのに、どうも動きが変わらない」という声です。ある会議でも、「つらい、つらいと言うだけでは、なかなか前向きな案は出てこない」という話になりました。危機感を共有したいのに伝わらない。その原因の多くは、伝え方が言葉だけになっていることにあります。
「厳しい」の重さは人によって違う
「厳しい」という言葉は、受け取る人によって重さがまったく違います。経営者が夜も考え込むほどの状況でも、数字を見ていない幹部や社員には「なんとなく雰囲気が悪い」程度にしか伝わっていないことがあります。売上の推移を見て「まずいかもしれない」と察している人もいれば、まったく気づいていない人もいる、というのが実際のところです。
しかも、言葉だけで危機感を訴え続けると、聞く側は次第に慣れてしまいます。「いつもの話だ」と受け流されてしまえば、伝えるほど効き目は薄れていきます。人は、自分の目で確かめたものでなければ、なかなか本気にはなれないものです。
見せるのは「今の数字」と「この先の見通し」
そこで必要になるのが数字です。まずは、今期の月ごとの売上、経費、利益を並べて見せること。どこで落ち込み、どこにお金が出ていっているのかが分かれば、「厳しい」の中身が具体的になります。
ただし、悪い数字だけを並べても人は動きません。もう一つ欠かせないのが、この先の見通しです。これから来る繁忙期も含めて「ここまで頑張れば、ここまで戻せる」という道筋を示す。目指す地点が見えて初めて、「では自分たちは何をするか」という話に進めます。見通しは楽観的すぎても悲観的すぎてもいけません。根拠のある範囲で、手の届く目標を置くことがポイントです。
数字をすぐ出せる状態を先につくる
とはいえ、いざ見せようとしても、すぐに数字が出てこない会社は少なくありません。帳簿の入力が後回しになっていたり、月ごとの集計をしていなかったりすると、現状をつかむだけでひと苦労です。忙しい時期ほど後回しにされがちですが、苦しい時期こそ、ここが最初の一手になります。
まずは通帳の入出金からでも構いません。月ごとの売上と経費をざっと一覧にし、利益の流れをつかむ。完璧な資料でなくても、全員が同じ数字を見ながら話せる状態をつくることが大切です。
苦しい状況を数字で見せるのは、経営者にとって勇気のいることです。けれども、見せないままでは、周りは何をどこまで頑張ればいいのか分かりません。現状と見通しをそろえて示し、同じ地図を手にしてから一緒に歩き出す。それが、厳しい時期を乗り越えるための確かな一歩になります。

