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2023年01月29日 [補助金]

補助金は悪いものじゃない〜補助金をめぐる物語@

ここ数年、中小企業診断士の私から見て、大きく変わったと思うことの一つが、世間の補助金についての考え方です。

ものづくり補助金やIT導入補助金に代表されるように、これまでも新しいサービスや製品を生み出そうとする中小企業のため、国からの援助として補助金は存在していました。しかし、経営者の方の中には、補助金を使うことに後ろめたさを感じ、大袈裟にいうと「補助金=悪」と考えるむきもありました。

風向きが変わったのはコロナ禍以降です。新しく創設された事業再構築補助金により、補助金を活用したいと考える企業は格段に増加します。同時に、補助金は単にお金を借りるツールではなく、自社がどうありたいのか、何を目標としているのかを見つめなおすきっかけになると実感した経営者の方が増えたのです。

これからご紹介するのは、会社を立て直すために補助金を申請した社長のお話です。

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40代のHさんはハウスメーカーの2代目社長。一戸建ての建築を専門とし、計画、施工、引き渡しまで一手に引き受けています。社員10人の小さな会社ですが、外注30人を抱え、売上げは3億円、丁寧な仕事ぶりで地元でも有名な会社でした。

しかし経営が順調だったこの会社も、多くの企業同様、新型コロナによって打撃を受けます。

「うちもコロナで厳しくて」元請け会社が自社の経営悪化を理由に、現在進行中の仕事を最後に、取引をやめたいと突然言ってきたのです。

お父さんの代からの付き合いがこんな形で終わるなどとは思ってもみなかったのはHさんだけではありません。社員たちからも会社の将来を不安に思う声はもちろん、「もう新築一戸建てなんて時代じゃないよな」と諦めに似た声すらも聞こえてきます。

このままではいけない。そう思っていたある日、事業再構築補助金のことを知ったHさんは「これしかない。これで新しいことをやろう」。しかし、そこに息子に会社を譲り、引退したはずのお父さんが口をはさみます。

「補助金? 国から金を借りるってことか。考えが甘いんだよ。この会社を作ったのは俺だ。俺は金なんか借りたことない」

「…とこんな感じでけんもほろろ。父のなかでは補助金=悪なんです。今この会社は私のものだってことはわかっています。でも、一代で会社を築き、ここまで会社を大きくした父の思いもわからなくはない。どうしたらいいんだろう」

そんなHさんに私は言いました。

「わかっていると思いますが、この会社はHさんのものです。お父さんのご苦労を知っていて、尊敬しているあなたの気持ちは理解しますが、そのことと事業を継続していく話は別物。それと気になったのですが、Hさんは補助金を使って何をしたいのでしょう。それがご自分でもわからないまま補助金、補助金と言うから、お父さまにも伝わらない。Hさん自身の目標を明確にしなければ。補助金を使うことに後ろめたさを感じているのは、じつはHさんなんじゃないですか」

この数日後、Hさんから連絡がありました。

「あれから若手社員と話し合っているうちに、これだ!と思ったことがあるんです。そう、リフォーム。うちには長年工事をしてきた外注さんがたくさんいるから、一戸建てのときの技術は使えますよね。あ、リノベもいいかも」
前のめりに話すHさんの様子が心配になり、私は言いました。

「リフォームもリノベもいいけれど、補助金はどの部分にどう使うんですか。目標がもっと具体的で、会社の強みがわかってないと

「具体的な目標って言われると困るなあ。会社の強みっていうのもあらためて言われると考えたことないかも」

再び袋小路に入ってしまったHさん。しかし、このあと事業計画書を作成するなかで、彼は自社を見つめ直し、会社を立て直すために補助金を使うことの本来の意義を知ることになるのです。      

▶続く(補助金をめぐる物語Aは、2月中旬に更新予定です。お楽しみに!)


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