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「新人が安心して働ける職場」を、みんなで設計してみた
「新人が安心して働ける職場」は、社長が一人でつくるものではありません。ある会社の月例会議では、社員全員の「自分が新人だったときの記憶」を持ち寄って、新人教育の仕組みをみんなで設計していました。
13回目を迎えた、終わらない取り組み
ある会社(A社)で、もう13回目になる定例の会議が開かれました。毎月一回、社長から社員までが集まって、職場づくりについて話し合います。テーマは「風通しの良い職場環境を目指す」。一度きりのイベントではなく、月を追うごとに少しずつ会社を変えていく、地道な積み重ねです。
この日のメインは、90分を割いた「新人教育」のワーク。経営者なら一度は頭を抱えたことがあるテーマではないでしょうか。
「正解」を上から教えるのではなく、全員で持ち寄る
この日のワークでは、新人教育に関わるテーマを三つ挙げ、参加者を3つのグループに分けて議論しました。社長も管理職も社員も、グループに混ざって一緒に考えます。
新人教育のルールを経営者が一人で決めて配るのではなく、一人ひとりが「自分が新人だったとき、何が嬉しかったか・何が不安だったか」を持ち寄って、みんなで設計していく。ここにこの会社のやり方の本質があります。
「自分が新人だったとき」を思い出すワーク
参加者たちは、自分の新人時代を振り返りました。出てきた声は、どれも生々しく心に残ります。
新人時代、嬉しかったこと
- 「あなたなら何の仕事をやっても上手くいく」と言われた
- 「どんな新人が来るか楽しみだった」と言われた
- 頼んだ仕事をやったら「助かった」と言われた
- いつでも何でも聞いてね、と言ってもらえた
- ランチに誘ってもらった、丁寧に教えてもらった
逆に、つらかったこと
- 忙しそうで、話しかけるタイミングがつかめない
- 「後で」と言われて、そのまま放置された
- 質問を否定されて、その後その人には聞けなくなった
- 何を質問していいのかすら、わからなかった
- 「見て覚えなさい」と言われた。本当はアドバイスが欲しかった
大事なのは、これらが「誰かを責めるため」ではなく「自分たちの経験から、新人を迎える仕組みをつくるため」の素材として共有されていることです。同じ失敗を、これから来る新人に繰り返させないために。
想定する新人を、具体的に思い描く
さらにこの会社では、抽象的な「新人」ではなく、実際に近く入ってくる人を想定して議論を深めました。本人が抱えるであろう不安を、先輩たちが先回りして言葉にします。
- 自分のスキルで大丈夫だろうか
- 学んできたことと実務のギャップ。「こんなことも知らないの?」と言われないか
- 仕事の流れややり方を、ちゃんと理解できるか
- 体調をくずさずにやっていけるか
そして「こうしてもらえたら、いちばんありがたいだろう」という対応策も具体的に挙げます。密にコミュニケーションを取る、ランチに誘う、些細なことでも聞いてくれることを受け入れる、業務の背景や制度の仕組みまで教える、手待ちにならないよう仕事を任せる。
相手の立場に立って、ここまで具体的に想像する。これができている会社とできていない会社では、新人の定着率が大きく変わってきます。
経営者へのヒント ── 仕組みは「現場の記憶」からつくる
この一日から、中小企業の経営者が持ち帰れることは二つあります。
一つは、新人教育マニュアルは経営者が机の上でつくるものではないということ。いちばん良い素材は、いま働いているメンバー全員の「新人だったときの記憶」の中にあります。それを持ち寄れば、机上の理論よりずっと血の通った仕組みができあがります。
もう一つは、こうした取り組みは一回では根づかないということ。この会社は13回目です。毎月、地道に、職場の空気と仕組みを少しずつ整えてきた積み重ねがあります。
「あなたが新人だったとき、何が嬉しくて、何がつらかった?」
「新人がすぐ辞めてしまう」「育てる余裕がない」とお悩みなら、まずは幹部や社員にこう問いかけてみてください。その答えの中に、あなたの会社だけの新人教育の答えが、きっと眠っています。

